特集

ライフワークを通して自然や植物、地球環境とか、人と人とのつながり、ものづくりや手づくりの心について思うことなど様々な分野で活躍する人たちからのメッセージをお届けします。

vol.02 オリーブの恵みアレッポ石けん

アレッポ石けんとの出会い

「シリア?それって、アフリカ?」

写真左から:シリアの街

2002年、私が青年海外協力隊員として、中東のシリア・アラブ共和国に赴任することが決まった時、そう言った友人もいました。確かに日本とは距離も文化も遠い遠い国。私もシリアと決まった時点では、どんな国なのかは全く知りませんでした。
ただ、父の知り合いに一人、シリアについて知っていた人がいました。「アレッポ石けん、使っていますよ。」余分なものを混ぜていない、アトピーの肌にも優しい石けんとして、シリア、アレッポ市名産のオリーブ石けんを愛用していたのだそうです。ちなみに最近ではさらにアレッポ石けんの人気は高まっているようで、日本からの需要の多さにアレッポ石けん工場のおじいちゃん社長は、「日本には石けん工場が無いんだろうな」と思っていたのだとか。

シリアでの私の任地はそのアレッポ市。石けん店が軒を連ね、各家庭でも必ずと言っていいほどアレッポ石けんが使われている街です。私もアレッポに暮らした2年半、アレッポ石けんのお世話になっていました。

アレッポには、もちろん石けん工場が数多くあるのですが、真面目に良い品質のものを作っている所はやはり限られているとのこと。その中の一社に、石けん作りの様子を見学させてもらいました。

石けん工場へ

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写真左から:石けん店・アレッポの石けん工場・炉

工場の門をくぐると、アレッポ石けん独特の香りが漂います。石畳の通路はちょっとぬるぬるしているので、気をつけて歩きます。
アレッポ石けんは、シリア特産のオリーブオイルと月桂樹オイル、それから、苛性ソーダと水を大釜で煮込んで作ります。一度に7.5トンも煮るのだとか。工場のおじいちゃん社長が、出来を注意深く見守ります。

釜の下には炉があり、火が勢いよく燃えて、釜に熱を与えています。なんと燃料も、オリーブの木で作った薪。まさにオリーブの恵みあっての石けんです。

煮えた石けん液は、年代もののポンプと太く長いホースを使って、石造りの床にしつらえられた枠に流し、冷やし固められます。

写真の青い服の人は、石けん液を平らに適度な深さにならす人。右手に持った板で液面をならしつつ、時折左手に持った棒をチョイと垂直につっこんで、液の深さを瞬時にチェックします。熟練の勘と素早い判断力が求められる作業です。

流した石鹸液はそのまま3日ほど放置し、冷え固まったら切る工程に入ります。熊手のように等間隔に刃のついた器具の上に人を乗せ、それをみんなで引っ張ることで縦横に切り、ひとつひとつの石けんに仕上げます。工場のお兄ちゃんたちはスルスルと何気ない感じで切り進めるのですが、20メートルぐらいはありそうな石けんプールの中を曲がらずに切ってしまうのですから驚きです。

アレッポ石けん工場で働く誇り

写真左から:釜・ポンプ・流す作業

その日石けん工場で働いていたのは、10名ちょっとだったでしょうか。熟練風の人もそうでない人もどの人も皆、生き生きと働いていて、そしてどの人からも、シリアのオリーブやアレッポ石けんに対する愛情と、自分達の仕事に対する誇りが伝わってきました。

小学校3年生ぐらいの男の子も一緒に働いていました。石けんを流す前の石の床をほうきで掃いたり、ホースを持つのを手伝ったりと、その身のこなしは頼もしい限り。シリアの子ども達は、親などの身近な大人にくっついてよく働いています。彼らのきりっとした表情を目の当たりにすると、「小さいのに、かわいそう」という気持ちにならないから不思議です。

写真左から:切る作業・作りたての石けん・スタンプ

アレッポ石けん工場が私に見せてくれたのは、石けんの作られる工程だけではありませんでした。今でもアレッポ石けんの無骨な形や香りは、私にあの真面目で素敵な人々を思い出させてくれます。


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【プロフィール】

yoshiko
http://blog.livedoor.jp/yoshikosy/
1979年生まれ。
大学で日本語教育を学び、卒業後、JICA青年海外協力隊に日本語教師として参加。
2002年4月~2005年2月の2年7ヶ月間、中東のシリア・アラブ共和国、アレッポ大学で、一般向け日本語公開コースと、文学部の第二外国語日本語コースを担当する。