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手作り石けんや手作りコスメなどで日本でも活躍し、「たおさん」の愛称で親しまれている、小幡有樹子さん。日本とNYを毎年往復してワークショップを開き、手作りの楽しさを伝えながら、取材や執筆活動などでも大忙しです。今回はそんな小幡さんに「手づくり石けんWEB」が独占インタビューし、少しだけプライベートを覗いてみました。

vol.09 手作り石けんから伝えていけるもの

そもそも石けんづくりに出会ったきっかけは何だったのでしょうか。

以前、アメリカのボストンに移り住んだ時に、冬だったので気候が寒かったり家の中の暖房がキツかったり、石けんが合わなかったり…、もともと肌が弱いところにいろんな条件が重なって、体中粉をふいたようにガサガサになってしまったんです。痒くて夜も眠れないくらい。それまでは肌が弱いのに本当に無頓着で。それで何とかしなくちゃと思っていたところに、手作り石けんのワークショップをボストンで見つけました。たまたまそこに手作りの石けんが置いてあったんですが、見たことがないくらい色が美しくて香りもよく、もうびっくり!作ってみたら、これがまたすごくよくて。小さい頃から肌の調子があまりよくなかったのに、手作り石けんを使ったら、3日くらいで生まれて初めてツルツルになったんです。ものすごく感動して、しばらくは盲目な信者のようでした(笑)。

写真:きっかけは肌が弱かったこと

そこで作った石けんが、初めての手作り石けんだったのですか?

そうです、96年の冬のことです。最初にサンプルでいただいて、その後、ワークショップで作ったものを使ったのがスタートですね。自分一人で初めて作ったバッチですか?実は捨ててしまいました(笑)。クラスで見ていたときはフムフムなるほどと思っていたのに、自分でやってみたらまったく分からなくなっちゃて。混ぜても混ぜてもこれでいいのか分からず、最後はしびれを切らして型に流し込んだんですが、次の日に見たら、得体の知れない物体になっていたんです(笑)。

写真:当時を語るたおさん

当時、参考になるような書籍など情報に関しては何かありましたか?

石けん作りに関して出回っている本は、数冊くらいしかなかったですね。情報自体がすごく少なかったですし。そのうちの1冊は97年に出版されたもので(もともとは95年に出た本のアップデート版)、これが当時いちばん新しい情報が出ていました。80年代後半くらいから、手作り石けんがどんどん広まっていき、情報を求める人達の間で、この本がバイブルと呼ばれ、大切な情報源となっていました。でも、この本は徹底的に植物性にこだわった本だったんですよ。しばらくはこの本に書かれていること=絶対的真実、という流れがありましたが、作る人が増え、ネットでの情報交換が増えると、角がとれたというか、いろんなバリエーションが受け入れられるようになりました。

しばらくは、その本などを参考にしながら手作り石けんを続けられたのですか?

そうですね。でもしばらくすると、ネットでの情報も増え、材料屋さんも増え、手作り石けんに関する書籍もたくさん出版されるようになったので、そのあたりからは自分流の石けん作りを模索するようになってきました。

ここまで手作り石けんを続けられてきた理由や魅力は何でしょう?

何回やってもそんなに思い通りに作れないというところでしょうか、きっとね(笑)。なんでだろう、って必ず疑問が残って終わるものだから。そこで満足しないからだと思います。それに作ってもなくなるじゃないですか。そうしたらまた作る。お料理みたいなものですよね。

写真:夢中になれる手作り石けん

現在、アメリカで他のワークショップに参加されることはありますか?

ワークショップは今はないですが、クラスをとって勉強しています。これが楽しくてしょうがないんです。ニューヨーク植物園というのが近くにあって、そこで植物に関連した200くらいのクラスがあります。例えばガーデニング、ランドスケープ、園芸、ボタニカルイラストレーションとか。私が受けているのはエスノボタニーというプログラムです。いろいろな文化で植物がどうやって使われているかという勉強で、薬草の勉強をしたり外で実際に植物をみたり、名前を学んだり。石けんというだけでなくて、植物をもう少し取り入れたワークショップをしたい、という思いもあって…。

写真:ニューヨークの植物園

ワークショップの中でそういった植物の生態系の話などはとてもいいですね。

そうなんですよね。ある程度自分で作れるようになるとパターンができてきて、そうするとちょっと変わった材料を使ってみたくなると思うんです。でも、日本だとある物に火がつくと、みんながワーッと飛びついたりするじゃないですか。そういうことが果たしていいことなのか、考えてしまうんです。前にクラスで道を歩いていて雑草や野草の名前を覚えて知ってしまうと、お友達に会ったときに挨拶するように無視して通り過ぎることができないと、先生が言っていました。その感覚で手作り石けんの材料を見られるようになればいいなと。作っていく過程で材料とトモダチのような感覚でいると、すごく大切に使うのではないかなと。 あとは、油は見たことがあるけど、それが作られる植物はあまり知らないという場合もありますよね。そういう方も知識が増えていったら、もう少し見方が変わるんじゃないかなと思うんです。

写真:自然や生態系を知ることも大切

お子さんが誕生して、石けんづくりや植物との関わり方に何か変化がありましたか?

前にカナダに住んでいたこともあって、その時はたくさんの自然の中でみんなの環境への意識も高く、わりとそれが当たり前だと思っていたんです。でも、とくにNYみたいに自然には縁の遠い街に来て、どうしたらいいかなって思いながら何年も経ってしまったんですね。もう半分あきらめ状態で、自然とか空気とかここでは期待してはいけない、そんな風に思っていました。けれども子どもができたことで、こんな都会でも自然の中で歩かせることはできないかなぁと思っていたら、意外に児童公園や森林があったり、植物園も15分くらいの距離にあることが分かったり。もう少し積極的に自然を探して、都会の中でどうやったら自然に暮らせるかを考えるようになりました。諦めていたものをもう一度探す・考えるきっかけになりましたね。

写真:ニューヨークの公園

現在、活動の中心はワークショップと連載などで、新たな展開はありますか?

今は1日講座しかできないんですけれど、本当はシリーズでやりたいですね。とくに初心者の方は1回だけの講座だと、家に帰ってから一人で作ってみたら、さっき見たけど分からない、油を変えてみたらまったく予想しないことが起きたとか、そういうことがあると思うんです。できれば、何回かのシリーズを月に1回というペースで。そうすると一緒に作った石けんができ上がって、使うというところも一緒に体験できますから。

最後にこれからも石けんを作りたい、作ってみたいという人にメッセージをお願いします。

まずは作ってみてください(笑)。最近はいろんな情報が多すぎて、全部情報を知らないとできないんじゃないかと思っている人が多いようで、それがたとえどんなに小さな疑問でも、答えがないと作らない方が多いんです。これを入れてみたらどうなるか、というのも本当は入れてみてくださいと言いたいところですが、難しいですよね(笑)。だから、まずは作ってみてほしいなと。そうしたら自分で疑問を解決できることの楽しさや、また新たな疑問が生まれて、それを解決していく楽しさを実感できるのではないかと思います。

今日はどうもありがとうございました。


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【プロフィール】

小幡有樹子
1966年生まれ。千葉県出身。
カナダのブリティッシュコロンビア大学で、言語学を学ぶ。帰国後、英会話講師や翻訳の仕事をする。96年夫に伴い渡米。深刻な肌荒れに悩まされて、手づくりの石けん・化粧品と出逢った。日本のソーパーたちのオピニオンリーダー的存在として人気を集め、取材や執筆の仕事に追われる毎日。
著書に「キッチンでつくる自然化粧品 和のレシピ」「キッチンでつくる自然化粧品 エステ&スパ」(ともにブロンズ新社)「肌に髪に「優しい石けん」手作りレシピ32」(祥伝社)「はじめての手づくり石けん」(学研)などがある。

http://www.taosoap.com/ たおさんのホームページ
http://taosoaplog.blogspot.com/ たおさんのブログ