BOOKクラブ

みんなに注目されているソーパーさんたちに、石けん作りや日々の暮らしに影響を与えたお気に入りの一冊と、その本にまつわるエピソードを紹介してもらいました。

「木の教え」

<宮大工の口伝>
木を買わずに山を買え
木は生育のままに使え
木を組むには癖で組め
これは今回紹介させていただく本「木の教え」の中の一節です。口伝とは宮大工の棟梁(師)から次の棟梁(弟子)へ口伝えで伝えられる秘伝のこと。
木は育った環境で性質が変わります。環境で土壌も変わるのですから当然と言えば当然のこと。同じ環境の中でさえ、東西南北があり、日当たりのよい南側では枝も多く、逆に北側では日が当たらない為、枝の数も少なくなります。一見こんな当たり前のこと?と思うかもしれませんが、当たり前のこととトコトン対話し、学んだ成果として今現在でも国宝や文化財指定されている社寺建築で人と材の対話を見ることが出来ます。例えば建物の南側には、枝が多く茂っていた跡の節が多く見られますし、北側には節の少ない材木が使われています。これは偶然ではなく自然の摂理に従ってあえてそうしているのです。
材木の組み方ひとつとっても一本一本違う捻じれや反りの癖を短所ではなく長所として上手く活かした結果として法隆寺の様に1300年建ち続ける建築物ができたのではないでしょうか?
時代を超えてきた建物を拝見するときは、ただ見るのではなく観て欲しいものです。
国宝などの大それた記述を記事冒頭に述べましたが、宮大工が山からの恩恵を形にした様に僕たちが日々作っている石けんも実は自然の恩恵を石けんという形に作り変えているだけなのです。例えば石けんによく使われる椿油は野生の木を育て、実から油を搾油できるようになるまで、60年という年月がかかると言われています。石けんを作る段階では、既に油はボトルに詰められ手元に届き、背景など考えずに抜栓し、レシピ通りの量を使い、油は石けんという加工品になっていきます。
僕の仕事の建築現場でも同じです。木は加工場で均一な性質の素材として製材され、各部材として現場に運び込まれます。発注し、入金さえすれば材が手元に届く効率優先の現代ですから、材となるまでの背景を知る機会も少ないですし、いちいち背景を考えていては仕事になりません(笑)
しかし、この機会に(あえて人生と言いますが)手元にある「材」の人生を知ってみるのもおつなものではないでしょうか?

ネットで検索をかければ、大抵のことは知ることが出来る時代です。でもそれでいいんです。先ほども述べましたが、椿油も芽生えてから油の実が収穫されるまでの60年、雨にも負けず風にも負けず、夏の暑さにも冬の寒さにも負けず・・・人の一生にも近い時間を経て1本のボトルとして手元にあることを知ることができたのだから。
どれだけ効率優先の時代となってもその60年は変わらないのです。ちょっとした一歩で材の人生を知ったとき、そこに感謝の心が生まれ、母の歳にも近いその60年に思いやりの心が生まれたのを覚えています。
そんな思いやりの心から材を大事に、より有効に活かそう!という想いから新たな技術も生まれたのではないかと思います。
その集大成が先人の1300年建ち続けた法隆寺なのでしょう。僕はこんな物の作り手としての宝物を建築・石けんを通して知ることが出来ました。この宝物を「みなさまに」という想いから今回「木の教え」この本をシェアさせて頂きます。

さて、上記では物作りをする上で僕が大事に想う一つとして「材を知る」ということを述べましたが、その他にもお伝えしたいことがあります。
まずひとつ目、物作りの基本中の基本である「バランス感覚」です。これは物作り以前に人生で大事な要素かもしれませんね。ただ漠然とバランス感覚といっても実際どのように養えばいいと思いますか?実は主婦のみなさまが毎日していることなんです。それは・・・そう料理です。物作りの基本は料理なんです。これは建築系の新聞や情報誌などのインタビューでもよくお話させていただいているのですが、ただ作るのではなく、「お客様にお出しする感覚で作ってみる」ということ。別に高級食材を使うと言うのではなく、日常の食事をいつもよりちょっと意識しながら作るだけでいいのです。調味料の量がちょっとでも変われば全く違った料理になってしまうのはよくお分かりですね?玉子焼きを作るにしても意識してその時のベストを形にすることでバランス感覚は養われます。同じ動作をするにしても「意識」することが大切なのですね。意識するのとしないのでは雲泥の差です。この日々の動作の中で養ったバランス感覚は物作りはもちろんのこと、人間関係・コミュニケーション、もっと身近なところではファッションなどにも役立つので是非取り入れてみてくださいね。
そして僕がもっとも大切にしている物作りへの想いは「生み出す形は自分の写し鏡」これに尽きます。これは僕が以前音楽を仕事にしているときに学んだことです。同じ曲を同じ人が同じように奏でていてもその音を受取るお客様の反応は全く違います。「同じ曲なのに今日は悲しげに聴こえた」「今日は陽気に聴こえた」一見極端に聞こえる率直な感想を聞いたとき、その時々の僕の心がそのまま反映している事を悟りました。人間形成や日々の歩みは写し鏡としてそのまま作品に反映されます。
僕が作品への写し鏡を知った時に気がついたこと・・・それは、自分が毎朝仕事に出かける際の玄関での家族の対応です。単純に気持ちよく「いってらっしゃい!頑張ってね!」と言われれば気持ちよく仕事に向えますし、良い仕事ができるものです。逆に何も言われなかったり、ブスっとした態度で送り出されれば、朝のはじめの一歩が上手く踏み出せず、気持ちも乗らず、仕事もはかどらない・・・。そんな経験はありませんか?
家族の朝の対応が僕の仕事に対するモチベーションや意欲のバロメーターになっていたのです。毎朝気持ちよく送り出してもらう。簡単なようで簡単ではないですね。そのために僕が心がけていることは、日々の家族に対する気配りや思いやり、コミュニケーションを大切にすること。それがあって家族との密接なコミュニケーションが成り立つものです。より良い仕事=より良い環境作りといっても過言ではないでしょう。
そう考えると仕事や作品作りも同じ。家の中から始まっています。その先に仕事仲間、友人との関係、そして社会があり、人間が形成されていくものだと想います。
僕は今年で40歳になりますが、その大半を自分自身が生み出した作品や仕事から教えられ、成長してきたのだと痛感しております。生み出したものには全て自分が写し出されているのですから。そればかりはどうやっても隠しきれません(笑)

僕が尊敬する建築家ル・コルビュジェも生前弟子とこんな会話をしています。
彼が街の道路清掃員を偶然見かけたときの話です「あの男がやっていることは私のやっている事と同じくらい大事なんだ」弟子は驚いてどういうことか尋ねたそうです。
「行為の結果というものはなされたことの質が問われることなんだよ。私達がしようと決めたことの内容、例えば私達の職業上の役割などは結果がもたらす価値や私たちが応えなければならない要求に比べたら大したことはないのだ。だから一軒の家が建てられるように弛む事無く、自分の力で自己の形成が上手くできるように励むのである結果の質の高さはこうした自分自身の構築から生じるのだ」と。
あの数々の名建築を遺してきたあのコルビュジェが作品に自分を写していたことを知ったときは驚かされました が、彼が生きていた時代は建築士などの資格もなく、芸術家が建築物を手がけていましたから当時の背景を考えると当然のことなのかもしれません。
最後に建築と石けんから学んだことをもう一つだけお話させてください。
作り出す大きさとして極端に差がある建築と石けん。そこに共通すること・・・それは受取った笑顔の大きさでした。
高層建築の様に天を見上げるほどの建築物もありますが、それを利用する方々に喜び、笑顔のない現状もこれまでの仕事の中で見てきました。逆に手のひらサイズの石けんですが、それを受取った時の大きな笑顔も見させて頂きました。
これから「はちへるつ」の代表として、そして一人の作り手として、作り出す物の大きさではなく受取った笑顔の大きさにとことんこだわる作り手として歩んでいきたいと思います。


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【ソーパープロフィール】

宮﨑大輔さん 神奈川県横浜市在住在住
◆はちへるつホームページ http://8hz.jp/
◆Facebookページ http://www.facebook.com/8hz.jp
◆男前石鹸作成日記 http://ameblo.jp/2505443/
★はちへるつ代表 1級インテリア設計士
★公益社団法人日本インテリア設計士協会 理事
★日本インテリア設計士協会千葉県支部会長
★メディカルハーブコーディネーター
16歳よりドラム・パーカッショニストとして音楽を奏で始める。
高校卒業後、長沢節主宰 セツ・モードセミナーへ入学、水彩画・スタイル画を学ぶ。
時を同じくして仏師滝本氏に師事、仏像彫刻を学ぶ。
自己表現する手段として興味のあるものを色々学ぶが、結局一番身近で自分の感性にあった音楽を選択。10年以上作曲やバンド、ライブ活動の成果としてテレビ・ラジオ等に多数の出演依頼が来る中、アーティストとしての向上心は芸術の最高峰建築へ・・・・。
29歳を目前に建築・インテリアの仕事に方向転換。施工会社へ就職。その中で2級及び1級インテリア設計士を取得し、インテリア設計業務も始め仕事の幅を広げる。インテリア設計業務の中で、公益社団法人日本インテリア設計士協会の理事に就任、協会の宣伝・広告部門を担当。また講師として専門学校等で教える立場に。
リフォームの仕事では施工業務に従事する中で、シックハウスやアレルギーなどの建築とも密接に関係する様々な健康障害などの相談を受け、お客様にアドバイスする事が多くなる。しかし、現在の建築の常識や自分の知識だけでは限界を感じ、建築の新しい可能性を模索し始める。その中で注目したのがハーブ、アロマ、民間治療などの自然療法の可能性。自然療法を勉強すればするほど、五感に着目したインテリア設計の必要性を痛感し、メディカルハーブコーディネーターを取得。
五感もインテリアの一部として、自然療法士が考えるインテリア設計を推進すべく2012年1月23日に「癒しの波長と住まう提案」というコンセプトを掲げ、「はちへるつ」を旗揚げ!!住宅のメンテナンスだけでなくそこに住まう家族のメンタルをも包み込む空間カウンセラーとして建築・インテリアの業務はモチロンのこと、より多くの方々に癒しの空間を提供したいと言う強い想い。そして手作り石けんに関わる方々とのご縁を橋渡ししてくれた京都のしゃぼんmamaさんから受取った「てづくる気持ちのお手伝い」というバトンを学びの場として提供するべく、東京都新宿区にレンタルルーム「CureRoom(キュアルーム」をOPEN!
OPEN記念として4月21日より小幡有樹子さんの講座もスタート。6月2日にはしゃぼんmamaとのコラボ企画マーブル石けん講座や、7月14日には犬の石けんでおなじみの里見千佳さんのクレイ講座、9月からは犬の石けん作りの本講座(6回講座)も決まっている。
キュアルームは、はちへるつの癒し空間のモデルルームでもあります。皆様のお越しをお待ちしています。