1)油脂そのものにあらかじめ香りを付ける
油脂には香りはよく付きますが、石けんになった場合、香りはかなり弱くなります。また、植物そのものの力を油脂にうつすために、浸出油の状態で販売されているものもあります。これはオリーブ油やひまわり油に植物を漬け込み、徐々に成分を引き出す方法です。例えばラベンダーやカモミール、香りはあまりありませんが、カレンデュラやデイジーなどもあります。
2)素材のもつ香りを生かす
例えば、油脂そのものの香りやオプションで入れたカカオなどの甘い香りなどがあります。保湿をアップさせるために使用するカカオマスやココアバターはもともと甘い香りがあるので、これをオプションとして加えた場合、石けんに甘い芳香が付きます。
3)香料で香りを付ける
石けんを型入れする前に香料を1%程度加えることにより、好みの石けんにすることができます。



写真左から:精油ではあまり使われない白ラベンダー カモミールのタネをとる為の乾燥風景 長いお付合いの駒ヶ根のハーブ農家
3)についてもう少し掘り下げていきましょう。
香料といってもさまざまな種類があり、大きく分けて天然と合成と2分することができます。天然香料は「〇〇OIL」のようにオイルと表記されますが、これは油脂とはまったく違う性質をもつ<エッセンシャルオイル>もしくは<精油>と呼ばれるものです。天然香料は植物性だけではなく、動物性の香料もあります(4種しかありません)。動物性香料は手に入りにくいので考えから外れてしまいますが、天然=植物のみを指すということではないのです。また、アロマオイルという表記の合成香料もかなりありますので、混同しないようにしてください。
石けんはアルカリ性なので、通常、私たちが知っている香りを石けんに練り込んでも同じ香りにならないことがあります。もしシナモン(※)のようなスパイシーな香りを使う時は濃度をうんと下げるか、スパイスのパウダーを利用します。
※シナモンオイルなどは皮膚に不快な刺激を与えるので、私はこのオイルを石けんに混ぜることはあまりしません。なぜ、こんなに自信をもって「シナモンは刺激が」と言い切るかというと、あれこれ失敗談があるからです。シナモンリーフ(葉からとる精油)よりバーク(桂皮からとる精油)のほうがずっとよい香りですが、その分刺激も強いです。このオイルが手に付いてしまい、そのあと腕の内側を触ってしまったら、かなりヒリヒリしました。この場所でこれだけヒリヒリするなら、粘膜(目など)はこわいだろうなあ……と思いました。



写真左から:フワフワしてかわいいティトゥリーの花 人気商品のゼラニウム。可憐でかわいい花 川上農学博士からアドバイスをうけてラベンダー水を取り分ける
精油は何種類かの方法でとりだしますが、<アブソリュート>と名前の付いているオイルは、揮発性のエッセンスや精油より色も香りも重いです。これを石けんの香り付けにほんの少しだけ使うと、かなり香りが長くもちます。その時、ホホバオイル(実際はワックス)でアブソリュートを溶かし、そのあと、石けんにオプションとして混ぜ合わせると香りが均一的にのびて、質感のよい泡立ちの石けんができます。
精油の種類のなかで<レジノイド>と書かれているものを見たことがありますか?樹脂からとる精油に注目するとこの表記を見ることができます。レジノイドも石けんにかなりよく残る素材です。1種だけの香りを混ぜても面白いですが、複数ブレンドすることにより、香りにふくらみがでて、表情豊かになります。例えばラベンダーとカモミール。この2種類は鎮静効果があるオイルで有名ですが1:1の割合でブレンドし、石けんに混ぜてみてください。ふくよかな甘いハーブの香りが石けんの泡となった時、すばらしいリラックス感を体験できます。
香りのブレンドについては、基本的なルールや混ぜ方のコツのようなものがきっとあると思いますが、作り手の方が一つひとつ香りを確認して、これぞというレシピをみつけるのも、また手づくりの楽しさではないかと思います。
最後にいくつか香りレシピをご紹介しましょう。これをヒントにもっとよい香りを作ってください。そしてよい香りができたら、私にもそのレシピをぜひ教えてください。
青い月 | 山の太陽 | サザナミ |
ペパーミント 2 | レモン 3 | ユーカリ 3 |
フェンネル 2 | プチグレイン 2 | メイチャン(リトセアクベバ) 1 |
シダーウッド 1 | パチュリ 0.5 | ゼラニウム 1 |
注:数字は割合です。普段は油脂の全体量からgで計算しています。
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【プロフィール】
やまぐち・みほ
http://www.aof-aroma.com
AOF香りカンパニー(有限会社桜ファーイースイト)代表。「AROMAISM」主宰。
香りを使った空間演出、自然化粧品企画販売、香りあのある楽しい生活の提案を行っている。著書に「手づくり石けん&コスメ」、「香りのレシピ」などがある。